FXには「まさか」がある。
そしてその「まさか」は、10年に一度じゃなく、数年に一度のペースで必ず起きている。
ここに並べた6つの事件を見れば、FXに「安全な時期」など存在しないことがわかるはずだ。
リーマンショック (2008.09)
2008年9月15日、リーマン・ブラザーズが破綻した。
サブプライムローン問題は以前から騒がれていたが、「まさかリーマンが潰れるとは」——市場の大半がそう思っていた。
ドル円は数日で約5円暴落。当時はレバレッジ100倍が普通だった。
100万円の証拠金で1億円分のポジションを持っていた人間が、わずか0.5%の逆行で全額を失った。
0.5%。たった50銭だ。
しかも暴落はそこで終わらなかった。ドル円は半年で110円台から87円台まで下落。
追証の嵐。ロスカットが間に合わず、入金額の何倍もの借金を背負った人間が続出した。
もしお前がこの時、レバ100倍でドル円ロングを持っていたら。
100万円の証拠金は3日で消え、さらに300万円の追証請求が届く。
「まさかリーマンが」——その「まさか」で人生が終わる。
東日本大震災後の急落 (2011.03)
2011年3月11日、東日本大震災。
地震と津波で日本中がパニックになる中、為替市場では「日本の保険会社が海外資産を売って円に戻す」という思惑から、猛烈な円買いが発生した。
ドル円は83円台から、わずか数日で76円台まで急落。
これは「円高」だ。つまりドル円をロング(ドル買い・円売り)していた人間は全滅。
家が壊れ、家族の安否もわからない状況で、FXの追証請求が届く。
震災で家を失い、同時にFXの借金も背負った人間がいる。
「天災」と「FXの損失」が同時に襲ってくる。これが現実だ。
もしお前がこの時、ドル円ロングを持っていたら。
被災地で家族を探しながら、スマホに「追証発生」の通知が届く。
相場は待ってくれない。天災も、為替も。
スイスフランショック (2015.01)
2015年1月15日、スイス国立銀行(SNB)が突然、ユーロ/スイスフランの上限(1.20)を撤廃した。
この上限は3年以上維持されていて、市場は「SNBが守り続ける」と信じていた。
その「信じていた」が、一瞬で裏切られた。
ユーロ/スイスフランは数分間で41%暴落(スイスフランが暴騰)。
問題は、この数分間、取引が全く成立しなかったこと。
ストップロス注文を入れていても、約定する相手がいない。
値が飛んで再開した時には、口座残高がマイナス数百万円になっていた。
「ストップロスを入れてるから大丈夫」は嘘だ。
流動性が消えたら、ストップロスは機能しない。
英大手ブローカーAlpari UKはこの事件で破綻。FXCMも巨額損失を計上した。
ブローカーですら生き残れないのに、個人が生き残れるわけがない。
もしお前がこの時、ユーロ/スイスフランをロングしていたら。
ストップロスは無意味。画面がフリーズし、再表示された時には全てが終わっている。
「損切り設定してるから安全」——その幻想が完全に崩壊した事件だ。
Brexit (2016.06)
2016年6月23日、イギリスのEU離脱を問う国民投票。
世論調査は残留優勢。ブックメーカーも残留に賭けていた。
FXトレーダーの大半が「残留だろう」と読んでポンドをロングしていた。
開票が始まり、離脱派が優勢とわかった瞬間——ポンドは崩壊した。
一晩で1800pips(約18円相当)の暴落。
東京時間の朝、起きてスマホを見た日本のトレーダーたちは絶望した。
「まさか離脱するとは」——その「まさか」に全財産を賭けていた。
Brexitの夜、俺は「残留確定だろ」と思ってポンド円をロングしていた。
寝て起きたら、口座が吹き飛んでいた。
200万円が一晩で消えた。「まさか」の一言で片付けるには重すぎた。
もしお前がこの時、ポンド円をロングしていたら。
100万円の証拠金は朝には消え、追証の通知が届く。
世論調査もブックメーカーも間違えた。「予測」は何の保険にもならない。
フラッシュクラッシュ (2019.01)
2019年1月3日、日本時間の早朝7時半頃。正月の三が日。
ほとんどの日本人トレーダーが寝ていた、あるいは実家でおせちを食べていた時間に、ドル円が数分間で約4円急落した。
原因はアルゴリズム取引の連鎖反応とされている。
正月の薄商い(取引量が極端に少ない状態)を突いて、売りが売りを呼ぶ展開になった。
豪ドル円はさらに悲惨で、一瞬で約8円の暴落。
そして数分後、相場はほぼ元の水準に戻った。
寝て起きたら口座が消滅し、相場は何事もなかったかのように戻っている。
これがフラッシュクラッシュだ。
もしお前がこの時、豪ドル円をロングしたまま正月を迎えていたら。
初詣から帰ってスマホを開くと「口座残高: 0円」の表示。
相場はもう元に戻っている。お前の金だけが消えている。
ドル円150円突破 (2022.10)
2022年、ドル円は歴史的な円安に突入した。
日米の金利差を背景に、ドル円は3月の115円台から10月には150円を突破。
32年ぶりの円安水準だった。
「まだ上がる」とドル円ロングに群がったトレーダー。
「さすがにここが天井だろう」とショートを入れたトレーダー。
全員が日本政府の為替介入で刈られた。
10月21日、政府は為替介入を実施。ドル円は152円台から一気に約5円急落。
ロング勢は暴落で壊滅。しかしショート勢も安心はできなかった。
介入の効果は一時的で、すぐにドル高方向に戻り始めた。
結局、ロングもショートも全員が損をした。
もしお前がこの時、ドル円をトレードしていたら。
ロングすれば介入で刈られ、ショートすれば円安再開で刈られる。
6.3兆円の政府介入の前では、個人の分析など無意味だ。
歴史は繰り返す。次の「まさか」は明日かもしれない。
リーマン、震災、スイスフラン、Brexit、フラッシュクラッシュ、為替介入。
「まさか」は10年に一度じゃない。数年に一度、確実に起きている。
次の「まさか」が来た時、お前の口座は生き残れるか?
答えがNoなら、FXはやめとけ。