「FX戦士くるみちゃん」は、エンターテインメントとして面白い作品だ。
でも、あの作品から学ぶべきは「FXのテクニック」じゃない。
学ぶべきは、FXが人間をどう壊していくかだ。
くるみちゃんの物語には、FXの本質を突く5つの教訓が埋め込まれている。
一つずつ、掘り出していく。
「取り返す」が地獄の入口。
くるみがFXを始めた動機。
「母がFXで失った2000万円を、FXで取り返す」。
この一文に、FXの最も危険な心理が凝縮されている。
「取り返す」——これはFXで身を滅ぼす人間の、100%に共通する思考パターンだ。
最初は「2000万を取り返す」だった。
損失が出ると「損失を取り返す」に変わる。
さらに損が膨らむと「せめて元本だけでも取り返す」になる。
「取り返す」の対象が変わるだけで、思考のループからは永遠に抜けられない。
2000万を取り返すために始めたFXで、1億3000万失った。
「取り返す」は、損失を65倍にした。
これがFXの「チェイシング(損失追い)」の正体だ。
俺も同じだった。最初の30万の損失を「取り返そう」とした。
30万が50万になり、50万が100万になり、最終的に700万になった。
「取り返す」と思うたびに、損失は加速した。
くるみちゃんを見て「あるある」と笑えない。全部、自分のことだから。
レバレッジは凶器だ。
くるみは作中で「20倍のレバレッジを低い」と言う。
これが異常だということに、お前は気づけるか?
レバレッジ20倍とは、10万円の証拠金で200万円分の取引をするということだ。
つまり、為替が5%逆行したら、元本がゼロになる。
為替の5%なんて、数日で動く。
くるみはさらに高いレバレッジで取引している。
利益が出れば大きいが、損失もまた巨大になる。
そして相場は、利益が出る方向に動くとは限らない。
レバレッジは「少ない資金で大きく稼げる仕組み」じゃない。
「少ない資金で大きく失う仕組み」だ。
くるみちゃんが身をもって証明している。
FXは周囲を巻き込む。
くるみの物語で最も心が痛むのは、本人だけが壊れるのではないところだ。
父・郁夫。
タンス預金300万円を娘に盗まれた。妻をFXで失い、今度は娘もFXに飲まれた。
この男の気持ちを想像してみろ。
芽吹。
くるみの影響でFXを始めた。最初は勝てた。調子に乗って独立。
全財産を失い、借金を背負った。
くるみが芽吹を巻き込まなければ、芽吹は普通の人生を送れていた。
FXは「自己責任」と言われる。
でも実際には、家族の金を使い、友人を巻き込み、恋人との関係を壊す。
お前がFXで失うのは、お前の金だけじゃない。周囲の人間の人生も巻き込む。
俺は親に「投資で少し損した」と言った。実際は200万だった。
友人にFXを勧めたこともある。幸い、友人はすぐにやめてくれた。
もし友人が続けていたら、俺は一生、罪悪感を抱えて生きることになっていた。
知識があっても勝てない。
くるみは特待生だ。頭は良い。FXの仕組みも理解している。
テクニカル分析も、ファンダメンタルズも、リスク管理の理論も知っている。
それでも1億3000万失った。
なぜか?
FXで負ける原因は「知識不足」じゃないからだ。
FXで負ける本当の原因は2つ。
1. 構造的に個人が不利。スプレッド、スリッページ、情報格差。ブローカーと機関投資家に対して、個人は構造的に負ける側にいる。
2. 感情が判断を狂わせる。含み損が出ると「切れない」。含み益が出ると「もっと伸ばしたい」。損失を取り返そうとロットを上げる。知識は感情の前では無力だ。
これは重要なポイントだ。
「負けたのは勉強不足だった」と思うと、また勉強を始めてしまう。
そしてまたFXに戻ってしまう。
「知識があれば勝てる」という幻想そのものが、FXをやめさせない罠になっている。
「やめる」が唯一の勝ち。
くるみちゃんの登場人物で、最も賢い判断をしたのは誰か?
萌智子じゃない。くるみでもない。
高根やす子だ。
やす子は小額でFXに参加し、早い段階で見切りをつけてやめた。
その後、漫画家活動に転向した。
FXをやめて、自分の才能を別のことに使った。
登場人物の中で唯一、まともな人生を歩んでいるのがやす子だ。
くるみは最終的に、すべてを打ち明けて自己破産を選んだ。
それは「負け」じゃない。やめることを決断できたという意味では、最大の「勝ち」だ。
問題は、そこに至るまでに1億3000万と、母の命と、家族との信頼を失ったことだ。
やめるのは早ければ早いほどいい。
やす子のように小さい損失でやめるのがベスト。
でも、くるみのように大きな傷を負ってからでも、やめれば終わる。
やめない限り、終わらない。
くるみちゃんの本当のメッセージ。
「FX戦士くるみちゃん」は、FXの漫画だ。
でもそのメッセージは「FXは面白い」じゃない。
「FXは人間を壊す」だ。
原作者のでむにゃんが自身のFX損失経験から描いたこの作品は、
ゆるふわな絵柄の裏に、「FXをやるな」という絶叫を隠している。
くるみちゃんを読んで、見て、「面白かった」で終わらせるな。
あの物語は、お前の未来の可能性の一つだ。
FXに手を出せば、お前もくるみになる。
芽吹になる。最悪、梢になる。
くるみちゃんから学ぶべき本当の教訓は、たった一つ。
FXを始めるな。始めてしまったなら、今すぐやめろ。
FXの代わりに、何をすればいい?
FXに費やすはずだった時間と金を、自分の人生に投資しろ。
くるみちゃんが教えてくれたのは「FXのやり方」じゃない。
「FXをやめた後の人生の方が、はるかに価値がある」ということだ。