⚠ 原作のネタバレを含む

母・梢の話はアニメ第1話の範囲。父・郁夫の話は、原作コミックの序盤の展開を含む。

00

先に答え。 くるみちゃんは実話?

// Is It a True Story?

作品はフィクションだ。アニメも放送前に「この物語はフィクションです」という注意書きと、FXの危険性を伝える警告を出している。

ただし、原作者のでむにゃんさんは、海外FX口座の取引で貯金をすべて使い切った経験があるとされている。もともとはWeb投稿サイト「新都社」で発表されていた作品で、コミックフラッパーでの連載にあたって炭酸だいすきさんの作画でリメイクされた。

つまり「くるみの話=作者の話」ではない。でも、損をしたときの頭の中、取り返そうとするときの焦り。あの描写は、負けた人間にしか書けない。

01

母・福賀梢。 「普通のお母さん」だった。

// Kozue Fukuga

梢は、もともと優しくて家庭的な母親だった。娘のくるみとも仲が良かった。
そして、数字が苦手だった。

その梢がFXの沼にはまっていく。だんだん家事が手につかなくなる。損失を埋めるために、実家のお金にまで手をつける。最後は2000万円を失い、パニックになって悪態をつく姿を、娘に見られてしまう。

アニメ第1話で、梢は「お父さんには内緒にして」とくるみに頼む。能登麻美子さんの絶叫に「ホラーより怖い」という声が上がった。

そのあと梢は、損失を埋めようと必死に働いた。それでも心と体が追い詰められて、自ら命を絶った。くるみが中学生のときだ。

02

梢の転落は、 現実でよくある「型」そのものだ。

// The Pattern Is Real

梢がたどった道を分けると、こうなる。

STEP 1
家族の誰も見ていない時間に始める
→ 夫は単身赴任中。止める人がいなかった。
STEP 2
生活が少しずつ崩れる
→ 家事がおろそかになる。チャートが生活の真ん中に来る。
STEP 3
自分のお金じゃないお金に手をつける
→ 梢は実家のお金を持ち出した。家族の財布が、取り返すための軍資金になる。
STEP 4
隠す
→ 「お父さんには内緒にして」。隠すほど、助けてもらえる道が消えていく。

どれも漫画だけの話じゃない。家族に隠してFXを続けて、ばれたときにはもう手遅れ、という話は現実にいくらでもある。

梢を追い詰めたのは2000万円という数字だけじゃない。誰にも言えなかったことだ。

03

父・福賀郁夫。 何も知らされなかった人。

// Ikuo Fukuga

くるみの父・郁夫(声:石川英郎さん)は、梢がFXをしていたころ単身赴任中だった。
妻がFXをしていたことも、損失を埋めるために実家のお金を持ち出していたことも、何も知らなかった。

そして数年後、同じことが娘で繰り返される。
FXで強制ロスカットの寸前まで追い込まれたくるみは、郁夫のタンス預金300万円を勝手に持ち出して、口座に入れた。

盗まれたことに気づいた郁夫は、くるみに理由を聞いた。そして、妻を失った経験から、泣きながらくるみを叱った。くるみはこのとき、一度FXをやめると決めている。

妻をFXで失った夫が、同じFXに娘を奪われかける。郁夫の涙は、残された家族の側から見たFXそのものだ。

04

くるみが背負ったもの。 「自分のせいで母は死んだ」

// What Kurumi Carries

くるみは、「自分が頑張っていれば母は死ななかった」と思い続けている。だから、母が失った2000万円を取り戻すと決めて、FXを始めた。

でもそれは、母を壊したのと同じ道具で、母の敵を討とうとすることだった。
くるみはその後、1億円を超える借金を負うことになる(くわしくは登場人物の末路で)。

FXで家族を失った人が、その損失を「取り返そう」としてFXに入る。
これも作り話だけの構図じゃない。「取り返す」と決めた瞬間から、損は増え始める。

05

もし、あなたの家族が 梢になりかけているなら。

// If It's Happening at Home

家事が回らなくなった。スマホを手放さない。お金の話をはぐらかす。家族の口座からお金が消えている。
どれか一つでも当てはまるなら、郁夫のように「知らなかった」で終わらせないでほしい。

責めると、相手はもっと隠す。梢がそうだったように。
まずは兆候を確かめて、話を切り出す順番を考えるところからでいい。

くるみちゃんの家族の話は、 フィクションの顔をした現実だ。

数字が苦手な普通の母親が、2000万円を失った。
何も知らなかった父親が、妻と娘の両方をFXに奪われかけた。
あなたの家で、同じことを起こさないでほしい。

家族がFXをしているかもしれない兆候 →